「程々にします」
言えば彼は「ほんとかなぁ」なんて言いつつ笑ってる。
……もう二度と叶うことはねーけど、ここに愛さんが加わった、眩しい"家族"の姿を見てみたかった。
鞠の両親も、それこそ俺らも。
お互いのことを想い合ってるようですれ違った。それがただの自己満足で何の意味もないってことを、もう痛いほどわかってる。
「じゃあ、そろそろ行くね」
「ああ、気をつけて。
恭くん、娘のことをよろしく頼んだよ」
「はい」
未だにぬいぐるみに目を輝かせてる蒔に、また遊びに来ると約束して。
鞠と家を出て向かうのは、藍華のたまり場。
「メリークリスマス鞠ちゃん!恭ちゃん!」
「……高校生でまだそんなに純粋に
クリスマス楽しめるヤツって存在するんだな」
入って一番に、サンタの格好をしたテンション高めのチカに迎えられた。
昨日は俺やあすみ、なずなのような予定がある組が来なかったけど、今日はそこそこのメンバーが揃ってる。
男ばっかだってのにわざわざ飾り付けもしたようで、どこから用意したのかツリーまで置かれていた。
……チカが指示して用意したんだろうな。
「メリークリスマス、チカくん。
これよかったら、チカくんへおすそ分け」
この場にも動じることなく、笑ってチカに小さなラッピング袋を渡す鞠。
中身は鞠が今朝焼いたクッキーだ。ほんとは蒔のおやつと、父親へのクリスマスプレゼントだけど。
「ちょっと余っちゃった」なんて鞠が困ったような顔をして言うから、
予定がなくて機嫌を損ねてそうなチカにプレゼントしてやったら?と俺が提案した。



