そばで見守っていた鞠も、その可愛さに写真を撮ってる。
ぬいぐるみを抱きしめたまま、めずらしくリビングのソファに座っていた父親に、「みてみて」と駆け寄っていく蒔。
「きょーちゃんにもらったっ」
「よかったなぁ。蒔がいい子だからだね」
「えへへ」
今日も、何の狂いもなくかわいいな。
父親の隣に座って、その隣にぬいぐるみを座らせている蒔を見たら、喜んでもらえたことに内心ほっとする。そんな俺を見ていたらしい彼が、口元に笑みを敷いた。
「ありがとう、恭くん。
鞠だけじゃなく、蒔のことも気にかけてくれて」
さすがに仕事が忙しいせいで、書斎にこもることはあっても。
彼がうちの両親のように各地を転々と飛び回ることは、もうしないらしい。……大切な家族をもう知らないうちに失いたくないからだと、スズさんから教えてもらった。
「いえ……べつに大したことじゃ」
「いや? 君が鞠の婚約者でよかったと思ってるよ」
婚約者と認められていることはもちろんだが、そう言ってもらえるのは純粋に嬉しい。
お礼を言えば、彼はまた穏やかに笑っていたけど。
「……でも週末鞠を独り占めするのは感心しないなぁ」
「っ、ちょっと、お父さん……」
「父さんだって鞠と過ごしたいんだよ?」
仲睦まじい親子の姿。部外者の俺が、こんなことを言うなんて烏滸がましいのは百も承知で。
ひとつ思うのは、鞠と蒔の父親が、この人で良かったってことだ。本当にふたりを大事にしているのが見て取れる。愛さんも、そうだったけど。



