いつもよりもすこし幼く見える寝顔に、思わず小さく笑みを漏らす。
額にくちづけを落とし、動画を止めてメッセージの返信をしていたら、不意に届く通知。それに既読をつけて、鞠を起こさないようにベッドから出た。
「連絡遅くなって悪ぃ」
『いや、べつに急いでなかったからいいよ~。
せっかくのクリスマスだしお前らも邪魔されたくないだろ。……鞠ちゃんは?』
リビングに向かいながら、「もう寝た」とだけ答える。
『話したいことがある』と送ってきた暖に対して俺が電話で返したから、気になったんだろう。ああ、とだけ答えた暖は、特にいつもと変わらなくて。
『このスマホでやり取りできてるっつうことは、無事に取り返せたんだな~。
……よかったじゃねえの。こういう時、ちゃんとはっきり言ってくれる彼女がいて』
「そーだな」
……いや。"変わらない"ように、してくれてんのか。
俺らが気まずくなってしまわないように。今まで通りに過ごせるように。気ぃ遣ってくれてんだろうな。
『俺さあ。鞠ちゃんのことが好きだよ』
「……知ってる」
暖は元から女に優しい性格だけど、無条件にすべてにおいて優しいわけじゃない。
ただ、昨日家まで送ってくれた暖が"何かあったら"と鞠に言っていたことや、早朝に電話一本の呼び出しに応えていたことを考えれば、容易に答えは出る。
『でも残念なことに。
……俺はお前のことも好きなんだよねえ』
「奇遇だな。俺もお前のことは大事に思ってんだよ」
『ははっ、なんだこのキモい会話』
決して、今朝帰ってきたとき、鞠を抱きしめていた暖に苛立たなかったわけではない。
それでも、それ以上の感情が湧かないあたり、自分でも理由はわかってる。



