腕の中で鞠が赤くなってるのがわかる。

先に風呂に入ったようで、鞠から香る甘い匂い。紗七の時はなんとも思わなかったのに、今はすげー落ち着く。



「なー鞠?」



「うん……?」



振り返った鞠と目が合う。

仕事から帰ってきたら鞠が飯作って待ってくれてるのを、入籍したわけでもないのに味わえるなんてとんだ贅沢なんだろうけど。



「せっかく作ってくれたのに、

メシ後でいい?って言ったら怒る?」



さらに贅沢を言うなら、今は何よりも鞠の方が欲しい。

質問の意味を理解しているのか否か、彼女の瞳が迷うように揺れる。



それから数秒待って「ううん」と動いたくちびるを、そのまま塞いだ。

……がっつきすぎは良くねーのわかってるけど。




「ひゃっ、」



鞠の身体を抱えて、そのまま自室に向かう。

正直部屋移動の時間も惜しいくらいだが、まあ色々諸事情もあるわけで。ベッドの上に鞠をおろすと、冷たいシーツに鞠が身をよじる。



「こっちも暖房つければよかったのに」



「ん、だって……

先ごはん食べると思ってたから、部屋誰もいないのもったいないし、恭が帰ってきてからつけたらいいかなって……」



「律儀だな」



組み敷くと、鞠が恥ずかしそうに目をそらす。

毎回はじめてみたいに初々しい反応を見せられると、それはそれでくるものがあって。くちびるを重ねれば、途中で鞠が自分から口を開ける。



……俺がどうやったら煽られんのか、よく分かってる。

それを無意識でやってんのが、怖ぇとこだけど。