いつも一緒の鞠がいないからか、車に乗り込むと「おかえりなさいませ」と優しく迎えられる。
それから車は、家に向かって滑らかに発進した。
鞠にいまから帰ると連絡を入れたら、すぐに『了解』の返事がくる。
先週とは打って変わった日常に、身体が疲れてる。紗七がマンツーマンで教えてくれてるから他の社員と話すことはほぼ無いけど、それでも環境が変わるとどっと疲れが出る。
最初の2日間に疲れすぎて、水曜には藍華のたまり場に行くこともやめたくらいだ。
昨日は行ったけど、"あの"なずなが苦笑して飲み物を奢ってくれたのを考えたら、目に見えて疲れてたんだろう。
「到着致しました」
「いつもありがとうございます、柳さん」
「とんでもないです」
柔らかく微笑んでくれるその人に見送られて、車をおりる。
その音を聞き付けたのか、玄関を開ける前に扉から鞠がひょこっと顔を出した。
「おかえりなさいっ」
「ただいま。よく帰ってきたのわかったな」
「ふふっ、
そろそろかなーと思ってたら車の音聞こえて」
迎えてくれる鞠と家の中に入って、鍵を施錠する。
そのまま部屋に向かう間も惜しくて鞠を後ろからギュッと抱き締めたら、びっくりしたのか鞠の肩が跳ねた。
「恭?」
「……会える回数増えたのは、嬉しいけど。
柳さんいるし車の中じゃお前に触れられねーから、逆になんもできなくてキツいな」
「っ……」



