「向いてないって言ってた割には、

もうすっかり慣れたようなもんじゃない」



「慣れたっつーか、無理して覚えただけだけどな」



月火金、と花蔵のビルに通ってはや3日。

3日にしては意味わかんねーぐらい詰め込まれた仕事量。まだこれで1部署目ってマジ?つーかこんだけ覚えても、ここの部署のほんの一部の仕事ってマジ?



「紗七、この数字の入力ってどっち?」



「ん?えっとそれはね、」



紗七が俺の手元を覗き込む。

鼻腔を掠めた甘い匂いで、その距離がやたらと近いことに気づいた。



でもまあ、俺の目の前にパソコンがあるから、教える距離感としては別に変じゃねー、けど。

なんとなく鞠のことが頭に浮かぶ。……別に紗七に対してはなんとも思ってねーけど、もし鞠が同じような距離感で男と話してたら、ムッとはする。




「これはあとでパーセンテージを出したいから、

単価はここに入力して、こっちは販売価格なの」



「……紗七」



「うん?なに?」



「距離近くね?」



1、2、3秒。

俺を見たあとに、パッと離れた紗七。



「ごめんごめん。教えるのに集中しちゃった」



「や、別にそれはわかってるけど」