『恭も課題ちゃんとやらなきゃだめだよ?』
「わかってるよ。留年できねーしな」
『この間のテストどうだった?』
「まあまあ?」
サボっていい理由にはならねーけど、鞠は学年1位の成績を持つ頭脳派。
勉強へのモチベーションが違いすぎるな、と定期的に思う。……まあ、俺もやらなきゃいけねーんだけど。
『わたしでよかったら教えるから。
……あんまり出しゃばるのも悪いかなって思うけど』
誰もがすれ違ったら振り返るような美貌と、スタイルと。
おまけに頭が良くて、料理もできて、ちょっと意地張るとこはあるけど家族思いで性格も良い。
「いや、なんか困ったら聞くわ」
俺にはもったいなさすぎるくらいだ。
……かといって、手放せるかって言われたら、もう二度と手放すつもりなんてねーんだけど。
『あのね、恭』
「ん? 愛してる」
『っなんで先言っちゃうの……!
だいすきって言おうと思ったのに』
「なんとなく言いてーことわかってたから?」
電話の向こうで膨れている鞠が容易に想像できる。
なだめるようにもう一度愛してると彼女に囁けば、鞠は小さな声で同じ言葉を返してくれた。……これ以上に幸せなことなんか、きっと無い。



