何か言いたげで、でも何も言わない鞠。
なんとなくこれ以上聞いても教えてくれないのを感じとって、その身体を自分側へ引き寄せる。寄りかかる状態になって、鞠がそっと目を閉じた。
「……疲れた?」
「ううん……」
「眠かったら寝てていいからな」
するりと、指先に絡んでくる指。
めずらしく甘えたな態度を見たら、ふっと笑みが漏れた。……こんな姿を見られるなら、仕事をがんばるだけの価値はあると思う。
「……鞠。
ごめんな、お前も疲れてんのに先送ってもらって」
寄りかかってそれ以上は何もせず、家の前に車が到着すると目を開ける鞠。「ううん」と言って俺と繋いだ手を離した。
……名残惜しくて、その身ごと連れ帰りたくなる。
でも明日も学校な上に、また同じように仕事もあるし。
ゆっくり休ませてやりたい気持ちと葛藤して、結局「また明日な」と告げた。
「うん、また明日。あとでまた連絡するね」
「ん。わかった」
扉を閉めて、車が発進するのを見送る。
ついこの間は俺と鞠を荒らしていったくせに、ランチの後にすぐ帰っていった両親。またいつものようなひとりでの暮らし。楽でいいんだけどな。
さっさと風呂を済ませ、レトルトのカレーをレンチン。
その間にスマホをチェックすれば、なずなから仕事どうだった?と来ていたり、鞠からお家ついたよというメッセージが来ていたり。
『今日はお疲れ様。
ひさびさに会ったけど元気そうでよかった。大変だと思うけど、明日もまた一緒に仕事頑張ろうね』
紗七からも、そんなメッセージが来ていた。



