「恭くん、行くよー」



学校の授業終わり、放課後。

スマホを見ていた俺に声を掛けてきたリカ。いつもなら、このまま全員でそろって藍華のたまり場に行く、という流れだが。



「あー……悪い。俺今日パス。

今日っつうか、これからたまに行けなくなるわ」



「どしたんだよ恭ちゃん~」



席を立ってバッグを肩に掛けると、早速絡んでくる暖。

お前は絶対に目ざとく聞いてくると思ってたよ。



「親から言われて、家の仕事手伝うことになった。

毎日じゃねーけど、特に冬休みとかはあんま行けねーと思うわ」



そう言えば、全員から"ああ"となんとも言えない顔をされる。

俺が花蔵の家の人間だってことはわかってて、でも特にそれに関しては口を出してこない。俺がそんなに家の仕事と関わってこなかったのもあるけど。




「大変だね……無理しないでよ?」



「おー。鞠も一緒に頑張るんだと」



手に持っていたスマホが震えて、鞠からの着信を知らせる。

橘花の送迎車がいつも通り鞠を迎えに行き、そのあとこっちに来て俺を拾ってから、花蔵の本社ビルに向かう。



俺や鞠のために橘花も手を貸してくれんだから、改めてその辺はありがてーなと思う。

鞠からの着信は、ここに到着したことを知らせるものだ。



「じゃー行くわ。

一応なんかあった時は連絡くれたら出れっから」



あまり待たせるわけにもいかない。

軽く手を上げて先に教室を出ると、そのまま少し急ぎ足で鞠の元へ向かう。



校門を出てすこし歩いたところに、わかりやすく停められている黒塗りの高級車。

……わかってたけど、一応お嬢様なんだよな。