ゆっくり言葉を探して、鞠が話を進める。
誰よりも家族のことを大事にしていて、いつも平然としてるけど、きっと色んなことを考えてる。
「だから、やってみたいんです。自分で責任持って」
「……鞠ちゃんの方が、恭よりも大人よねえ」
最後まで鞠の話を聞き終えた母さんが、俺を見てくすくす笑いながらそう言う。悪かったな、ガキで。
今だって母さんからの提案を断ろうとしたのは、"鞠と過ごす時間が減る"っつー自分勝手な理由だよ。
「でも残念だけど、これは花蔵の人間に務めて欲しい仕事なの。
だから代わりに鞠ちゃんには、別の仕事を紹介してあげるわ。……ただ、ひとつ条件があって」
「条件、ですか……?」
鞠の表情が、すこし強ばる。
なんとなく鞠の心情を察しているのか、母さんはそれを見てもう一度口元の笑みを深めた。
「そう、条件。って言っても簡単かしらね?
恭が今の提案を引き受けてくれたら、紹介してあげる」
じ、っと。鞠が俺を見つめてくる。
鞠がやりたいと言い出して、仕事を紹介すると言われてしまった時点で、俺の答えはもう決まってるようなもんだ。
「……しゃあねーからやってやるよ」
「ふふっ、それじゃあ決まりね」
俺の返事に、どこかホッとした様子の鞠と。
「恭は鞠ちゃんに甘いね」と笑ってる父さん。
「ありがとう、恭。一緒に頑張ろうね」
……こうして。
何故か鞠と一緒に、家の仕事を手伝うことになった。



