ぬるま湯に浸かった感覚で、いつまでもガキで。
家のことがなければ結局は鞠との結婚さえできるわけが無い。支えてくれる他人にばかり頼って、甘えたままの俺はいつまで経っても成長しない。
母親がいなくなっても、鞠は自分で歩き続けたし、大事な妹を守ってきた。
婚約という形で、自分を犠牲にすることだって厭わなかった。
そんな鞠と今の俺は、あまりにも釣り合わなすぎる。
もう離したくないという理由だけで、別れることも選べず距離を置こうとしているこの現状さえ、正直甘えだと自分で思う。
絶対に迎えに行くから、一度別れて欲しい。
そう言うほどの覚悟が、俺にはない。
「だから一旦、ちゃんと自力で成長したい。
そのために、鞠にも協力してほしい」
「……、わ、かった」
鞠が、小さく返事する。
くちびるにキスして、「サンキュ」とお礼の言葉は伝えたけど、お互いそれ以上触れ合う気にはならなくて。
「今日はもう、帰るね。
一緒にいても、恭の邪魔しちゃうだろうし……」
「そんなことねーよ」
「ううん、でも帰るね」
「……わかった。送る」
格好を整えた鞠が、俺の手を握る。
離すこともなく準備して鞠をバイクの後ろに乗せ、そのままマンションへと送り届けた。
「あー……」
また連絡するね、と。いつもと変わらない笑みを見せて、鞠は帰っていった。
鞠を離したくない。その気持ちは、本当に変わんねーのに。……このままでいいのかって自分への問い掛けが、永遠に頭の中で渦巻いてる。



