結婚って言葉に踊らされてるのは、紛れもなく俺の方。

独り占めしたくてどうしようもなくて、鞠を強く抱き締めて、なんでも手に入れたような気になって。



「……鞠」



「うん?」



「離す気もねーし、別れるとか微塵も考えてねーけど。

……ちょっとだけ、一旦距離置かね?」



「え、」



突然の俺からの言葉に、鞠が瞬く。

鞠を大事に思う気持ちに、間違いなく嘘はない。それは断言できる。……ただ。



俺があまりにも、すべてにおいて未熟だから。

このままじゃ、鞠のこともダメにさせてしまう気がする。




「な、んで? わたし何かした?」



「違う。何もしてねーよ。

……ただ、俺の覚悟が足りなすぎる」



「覚悟って、」



「いつまでもお前やあすみたちに甘えて、紗七のことも結局は自分で解決できなかった上に鞠を泣かせた。

そういう未熟なとこが気になるし、自分ですげー腹立つんだよ」



「恭……」



あの時だってそうだ。

鞠が、襲われかけた時。取り乱す彼女を我に帰らせて落ち着かせたのは俺だけど、助けてくれたのはスズさんだ。



スズさんと、鞠の父親。

そのふたりからお礼を言われたものの、俺は何ひとつ鞠のことを守ってやれてない。