「わ、分かってる……、から、出て行ってよ!」
声が震えてきた。
そのことで、私は自分が怖がっていることに気づく。
鈴井くんが、怖い?
ううん、違う。
何か、もっと別のこと……。
でも何に怖さを感じているのか、今はよく分からない。
「オレのこと、好きだろ?」
鈴井くんは立ち上がり、ため息混じりに呟いた。
「別れたくないって思ってたから、ずっとオレとの話し合いを避けてたんだろ?」
……!!
その時。
はっきりと分かってしまった。
「私……」
私、別れたくないんじゃないんだ。
また誰かに愛想を尽かされることが、心の底から許せなかっただけで。
鈴井くんに「別れよう」って切り出されるのが、癪に触るだけで。
別れたくないんじゃないんだ。
「……だって、好きじゃないもん」
好きじゃない。
その証拠に。
今、この瞬間より。
昨日の、優大の熱愛報道のほうが。
よっぽどつらかった。