夏も、もうすぐ終わる頃。

セミの声が少し遠くなってきた。

……相変わらず暑いけれど。



朝。


スマートフォンのアラームで目覚める。

画面には『着信 優大』の文字。



……そうだ。

昨夜も電話くれていたもんね。





私は電話に出ていないけれど。

ううん、出られなかった。




優大くんの声を聞いたら。

話をしてしまったら。



私の決心が揺らぐ。





洗面所に行って。

鏡に映る自分を見つめる。




「……地味」



ここ最近、泣き疲れて寝ていることが多いから。

まぶたが腫れている。



「こんな顔、見られたくないなぁ」




まぁ、見せることもないかもしれないけれど。




……さすがに怒ってるよね?


ずっと優大くんからの着信、無視しているんだから。