「……?説明が長くて面倒くさかったのかな?」
呟いていると、
「いや、オレが後ろに立っているからですよ」
と、別の男の人の声がした。
この少しハスキーな声。
「武岡さん!」
振り向くと、武岡さんが立っていた。
今日は白いざっくりしたセーターの上に、デニムのジャンパーを着ている。
黒い細身のパンツに赤いスニーカーが素敵。
そしてやっぱり今日もキャップを被っていた。
「ごめんなさい、遅くなりました」
?
武岡さんの声が何故か不機嫌に聞こえる。
「何か、怒ってます?」
不安になって聞いてみる。
武岡さんは、
「いいえ。怒ってませんよ」
と、笑顔を見せた。
……でも、なんか……。
「観たいって言ってた映画、始まりますよ」
そう言って武岡さんは映画館に入って行くので、私も慌てて後に続いた。
私が観たいと伝えた映画は、クリスマスにちなんだ映画で。
心温まる恋愛ものだと、テレビコマーシャルでも言っていた。
映画館のロビー。
チケットもここで買える。
「いいんですか?恋愛もの、嫌じゃないですか?」
私はチケットを買う前に、今更だけど、やっぱり不安になって聞いてしまう。
「……誰か、恋愛ものが嫌な人がいたんですか?」