そして。
クリスマスイヴ当日。
お昼過ぎ。
私は待ち合わせた映画館の入り口に到着した。
武岡さんはまだみたい。
しばらく待っていたら、
「お姉さん、おひとりですか?」
と声がした。
誰かが誰かにナンパしているのかな。
本当に「お姉さん、おひとりですか?」っていうんだ。
……そんなことを考えていたら。
「あの、お姉さん!おひとりなんですか?」
と、肩をポンポンと叩かれた。
えっ、私ですか!?
振り向くと、若い男の人が私をじっと見ていた。
茶髪で、ピアスをしていて、なんとなく清潔感を感じられない服装。
そして、若そうだった。
まだ20代なんじゃないかな。
もしかして前半かも。
「あの、すみません。待ち合わせをしています」
私は言った。
「申し訳ないのですが、多分私、あなたよりものすごく年上です。私なんかに声をかけるより……」
「あー、あー、いいです、ごめんなさい」
男の人は突然慌てだして、そそくさと去って行った。