今一度そう繰り返した僕に、タイガは分かりやすくばつの悪そうな顔をして、それから。


「…………ごめん」

「え? なに?」

「だから! ごめんって!」


むっとしたままの頬も鑑みると、及第点、といったところだろうか。
タイガの吠えるような謝罪に、ユイは頷いて右手を差し出した。


「いいよ。仲直り、しよ」

「……ん」


彼らが手を結んだ途端、ひゅー! と冷やかす音が聞こえ、夫婦――といったら怒られるかもしれない――が野次馬を追いかける。

結局しっかり巻き込まれただけだった、とため息をついて立ち去ろうとした時、袖を引かれた。


「あの、」


振り返り、合わない視線。随分と下から見上げてくる彼は、車椅子の少年だった。


「さっき、おれのこと服の色で呼んでくれて、ありがとうございました」


予想外の感謝に、返す言葉を失う。黙り込む僕に構わず、彼は笑った。


「大体の人は、おれのこと、『車椅子の』って言うから」


ああ、そうだ。彼を呼び止める時、僕だってそう口走りそうになった。何のためらいもなく、服の色で呼ぶことを選べたわけじゃない。きっと美波さんなら、一切の迷いなく選べたのだろう。人を傷つけない言葉を。


「おーい、ナオト! 行くぞー!」