いわゆる親近感。それは僕の方だって、感じなかったと言えば嘘になる。
純粋に共通点を見つけたからなのか、やはり同情からのものなのかは、はっきりと決めきれない。ただ、傷の舐め合いをする気は毛頭なかった。


「君は自分のことを障害者だと思ってるの?」


僕の問いかけに、彼女が言葉を呑み込んだ気配がした。

彼女の兄と話をしてから、ずっと気にかかっていたことだ。
色が見えない。見え方が他の人と違う。色盲や色弱と聞くと、障害というワードに結び付きやすいのは分かっている。
しかし事実だけを述べるなら、色覚異常は障害者手帳の対象ではない。


「……違うとは、言えないです」


美波さんの口から発されたのはそんな言葉だった。彼女らしくない、歯切れの悪い口調である。


「もちろん、差別的な意味ではないですよ。ユイちゃんに言った通り、私の目は特別なんだと思ってます。でも、生活していて困ることはありますし、これを障害だと感じることも沢山あります」


いつものような強引さは、そこにない。軽く突けば倒れてしまいそうな儚さをもって、彼女は懸命に音を紡いでいる。


「私にとって障害っていうのは、自分の乗り越えていくべき壁なんです。この先ずっと、付き合っていくパートナーです。だから、悪い言葉なんかじゃない」