その言葉が腑に落ちたのか、揺れて定まらなかった瞳が真っ直ぐ前を向く。


「ユイの目、とくべつ?」

「そう。特別」

「でも、赤いの分からないよ」


美波さんが今さっき集めていたクレヨン。小さい人差し指がぴんと伸びた。


「赤のクレヨン、どれ?」

「ユイちゃん……」


この子もまた、赤や緑色系統の見分けがつきにくいのだろう。赤緑色覚異常――先天性の色覚異常の中で最も多いとされている。


「教科書のお魚の色、どれ?」


この年齢で周りから変だと言われ、気にするなという方が無理だ。狭い教室という水槽の中で、たとえ自分がスイミーだと思い込めたとしたって、周りの赤い魚が全員仲間になってくれるとは限らない。


「……ごめんね。私も分からないの」


長い睫毛が彼女の頬に影を落とす。憂いの帯びた表情が、兄と全く同じだ。


『航先輩、アドバイスを下さい!』

『航。お前に頼みがある』


どいつもこいつも何なんだ。否、二人だけだったか。僕のことを大して知りもしないくせに。
強いて言うならば、知っているのは僕の目が“普通じゃない”ということだけのくせに。


「赤がどれかは分からないけど、でも――」