どの電車に乗って、どの駅で降りるか。
どちらも普段学校へ行く際と変わらなかったため、迷うことはなかった。

祝日というだけあって、街の景色はいつものそれと少し違う。浮かれた様子のカップルや親子連れを見かけて憂鬱になりながらも、メモ帳の住所を辿っていった。

十分、いや十五分ほど歩いただろうか。恐らくこの辺りだろう、と歩幅は自然と狭くなる。

――福祉センター。
その文字が目に入り、ああ、やっぱりそうか、と不思議なことに納得している自分がいた。この紙切れを手に取った時から、彼女なのではないかと思っていたのだ。彼女以外あり得ない、とまで。

本当に彼女だろうか。あんなに腹が立っていたのに、それを確かめずにはいられなかった。興味本位といえばそれまでだけれど、まんまと誘われてしまったわけだ。その事実に、また性懲りもなく腹が立つ。

しかし、苛立ちはすぐに消化されてしまった。


「……航先輩?」


その声が聞こえて、反射的に振り返る。
聞き間違えるはずも、見間違えるはずもない。そこにいたのは美波さんで、彼女の履いているスカートにも見覚えがあった。