エレベーターはどこ? もう階段でもいい、とにかく三階に行こう。
全力ダッシュで構内を駆け抜ける。幸いにも、閉まりかけていたエレベーターに滑りこめた。


「大学って、怖い……」


自業自得だけど。分かってるけど。
はあ、とため息をついてから、気持ちを切り替える。

三階にはすぐに着いた。しかも降りて早々、目の前で「全国美大絵画展~あなたの想いを届けよう~」との文字列が出迎えてくれる。

手前の方から、急いで一つずつ描いた人の名前を辿った。
違う、これも違う、航先輩じゃない。焦る。呼吸が整っていない。汗も滲む。


「あ、いた! ねえ、そこの君――」


さっきの人だ。どうしよう。
飛んできた声に、振り返ろうとした時だった。


『犬飼航』


他の絵とは反対側の壁に、たった一枚だけ展示されていたそれ。


「あっ、た……」


吸い寄せられるように近付く。最優秀賞、と掲げられたその下には、彼の名前と絵のタイトルがあった。


『白虹』