手紙には、彼の絵が全国を巡ることになったという内容が記されていた。パンフレットにはそれについての詳細情報が載っている。
舞台は全国の美術大学。あなたの想いを届けよう、というコンセプトで、誰でも応募できる絵画展だったようだ。
その中でも優秀作品に選出されたものが、期間を決めて展示されるらしい。
嬉しかった。遠く離れた場所にいても、彼は変わらず私に届けようとしてくれている。
こっちに来てから、モノクロだった私の世界は、瞬く間に色を取り戻した。
新しい学校では優しい友達に恵まれ、理解のある先生もいる。逃げたわけじゃなくて、リセットしただけ。そう言ってもらって吹っ切れた。やっぱり心の状態が大きく関係していたみたいだ。
もう大丈夫。私は自分で歩いて行ける。また転んでしまったとしても、立ち上がり方を知っている。手を差し伸べてくれる人も、たくさんいる。
『いつか、君が自分で自分を取り戻したら、その時は会いに行くから、教えて欲しい』
本当だった。私が大丈夫だっていうのを分かっていたみたいに、航先輩からの手紙がきた。
彼の絵が私に会いに来る。私も、会いに行こうと思う。



