「清、あんた宛てに手紙が来てたよ」


扇風機が欠かせない――というよりも、扇風機だけではいよいよ耐え切れない暑さになってきた。でも、おじいちゃんおばあちゃんの家にはクーラーがついていないのだから、我慢するしかない。

保冷剤を首に巻いて勉強していると、おばあちゃんが封筒を机の上に置いた。


「ありがとう……私に?」

「美波清さまって書いてあったんだから、あんたしかいないべさ」


誰からだろう。友達とは大体スマホでやり取りしているし、わざわざ手紙を送ってくる人なんていないはずだ。
仕方なく手を止めて封筒を裏返す。と、


「航先輩!?」


そこには確かに、「犬飼航」の名前があった。驚くのと同時、嬉しさがじわじわと胸に広がっていく。
彼は、とても大切な人だった。私の恩人であり、尊敬する先輩だ。

去年の夏、空港へ向かう私を見送ってくれたのを最後に、連絡は途絶えている。
私は北海道の高校へ転校し、新しい生活や環境に慣れるので精一杯だった。自分の力で頑張ると言った手前、すぐに連絡するのは良くないのでは、と迷ったり意地を張ったり。結局、タイミングを逃し続けていたのだ。