電源がつくまでの僅かな時間さえも惜しい。ようやく起動した画面をタップして、検索をかける。
ひとまず学校の最寄り駅から電車に乗り、車内で純が送ってくれた時刻表と検索画面を照らし合わせながら、最短ルートを探した。
間に合うだろうか。少しでも早い方がいいと思って学校を抜け出してきたけれど、清を捕まえられる保証はない。彼女に連絡を取ったとしても、はぐらかされて終わりだ。
焦る僕とは対照的に、空は気持ちの良い晴天だった。しかし五分もしないうちに雲が立ち込めてきたかと思えば、雨が降り始める。かなりの土砂降りだった。
電車を乗り換え、空港へのアクセスが可能な駅へ向かう。純の情報によると、清はそこから空港へ出ているバスに乗るとのことだった。
『私、航先輩に――』
あの時、彼女は何を言おうとしていたのだろう。僕が聞き返した後、見たこともないような寂しい表情で、何でもないと首を振った。
一体いつから今日のことを考えていた? 何回僕の前で作り笑いをした?
『私、犬飼先輩の絵を見て、この高校に来ようって決めたんです』
君は、僕に出会うべきだったんだろうか。僕が背負わせた傷を、君は何て言うだろう。



