虹色のキャンバスに白い虹を描こう



それを最後に、通知は鳴らなくなった。
学校に着く前、いつものように電源を切って、リュックにしまい込む。

教室へ入って朝のホームルームが始まり、そのままテストが行われた。


『昼には家を出るって言ってた』


時計の長針と短針が一番上で重なる。机の上には、既に解答を終えて裏返した世界史のテスト用紙がある。
どうせあと三十分もすれば帰りのホームルームが始まるだろう。全部終わって、その時に考えればいい話だ。


『もしかしたら、帰ってこないかもしれない』


何だ、帰ってこないって。一言も言わずに行くつもりなのか。しかも純からの連絡がなかったら、僕は一切知らないままだった。

全く、君はいつもそうだ。自分で勝手に決めて、強引で、今まで僕は散々振り回されてきたけれど――


「先生」

「どうした、犬飼」


僕が必ず君の言いなりになるだなんて思っているのなら、それは大きな間違いだ。


「具合が悪いので、保健室に行きます」

「一回出たらテスト中はもう教室に戻ってこれないぞ」

「大丈夫です」


椅子を引いて立ち上がる。財布とスマートフォンだけを持って、教室を飛び出した。