僕らの様子を観察していたらしい近江さんは、そう言って愉快そうに目を細める。
当人にそんなつもりはないのだろうけれど、彼の表情が僕を揶揄っているようで、いたたまれなかった。
「ああ、そうだ。今日君が撮った写真を送りたいんだけど、どうすればいいかな」
「……別に、大丈夫です」
「そんなこと言わずにさ。さっきデータを見たよ、いい写真だった」
近江さんの言葉には、一切の忖度もお世辞もない。そうする必要がないからだ。いい写真だった、という言葉にも、それ以外の意味なんて含まれていないのだろう。
仕方がないので、とりあえず電話番号を教えることにした。後で連絡するよ、と彼が嬉しそうに僕の番号を控える。
「それと、これはさっき僕が撮った写真なんだけど」
カメラを操作した近江さんは、こちらに液晶モニターの部分を向ける。
一瞬、自分の目を疑った。
「本当にいい顔をしているから、許可を取るより先にシャッターを切ってしまってね。申し訳ない」
写っていたのは、間違いなく僕だった。恐らく、清がブランコを乗っている時に突然横から近江さんに撮られたものだ。――画面の中の僕は、確かに、笑っていた。
「その子は君にとって、すごく大切なんだね」
『私の大切なものはあなただって――航先輩だって、どうしても残しておきたかった』
穏やかに、息を吸う。吐き出す。
左肩に伝わってくる温もりをしっかりと噛み締めて、僕は頷いた。
「はい。とても」



