「犬飼くんのことが好きです。付き合って下さい!」


人気のない校舎裏に呼び出された時点で、こうなることは大体予想ができていた。以前ならば「予想」なんてぬるいものではなく、「確信」だったと思う。相手の欲しい言葉をあげて、求められている行動をしていたからだ。

けれども、今は状況が少し違う。
僕は別にいい人ではなくなったし、自分本位の言動ばかりだ。実際、これまで僕に絡んできていた女子たちも最近は顔を出さなくなった。

それにも関わらず、こうしてぽつぽつと呼び出されることがある。


「ごめん。君のこと、全然知らないんだけど」


はなから了承する気はない。よって、愛想を振りまく必要もない。

しかし、今この状態の僕を好きだと伝えてくる人は、本当に僕のことが好きなんじゃないかとも思っている。
僕のことが好きなのではなくて、自分にとって都合のいい言動をしてくれる僕が好きなだけだ――前までは、そう解釈することしかできなかった。


「えっと、四組の斉藤(さいとう)シホです。……付き合って下さいって言ったんだけど、本当はちゃんと告白したかっただけっていうか、だからあの」