虹色のキャンバスに白い虹を描こう



タイガの周りを囲む男子たちの顔がきらきらしている。
正直、それが答えだと思った。勝ち負けというよりも、惹かれる絵を描いた、という点では、今の僕は誰にも敵わない気がする。


「……これ、いちご?」


髪を結うのは飽きたのか、僕の絵を指さした女の子が不思議そうに問うてきた。頭皮に違和感があるのだけれど、もしかするとヘアゴムを適当なところで縛ってそのままにしているのかもしれない。


「こっちはトマト?」

「さくらんぼもあるー」

「あ! ここに赤ずきんちゃんとサンタさんいるよ」


口々に喋りだした女子たちが、でも、と顔を見合わせる。


「ぜんぶ黒だねえ……」


全部黒、その通りだ。僕は黒しか使わなかった。
赤といえば? と聞かれて想像するものの中で、なるべくポピュラーで誰でも知っているものをかき集めただけだ。


「お、おい! おまえ、テーマ聞いてなかったのかよ、赤いものって言ったろ!」


タイガが慌てたように目尻を吊り上げる。


「うん。だから、赤いもの(・・・・)描いたけど」

「は、はあ……? ぜんっぜん赤色使ってねえじゃん!」

「君は赤いものを描けって言ったけど、赤色で描けとは言ってない。違う?」

「なっ……」