虹色のキャンバスに白い虹を描こう



僕が輪郭を描いていた最初のうちは黙って眺めていたユイも、他の色を一向に加えようとしないことに不安になったのか、途中でそう声を掛けてきた。
うん、と軽く受け流した僕に、彼女の眉毛が八の字になる。


「よっしゃ、できた!」


自信ありげに腕まくりをしたタイガは、既に描き終えていた僕を見て首を傾げた。


「おまえ、もう終わったの?」

「うん」

「……ふぅん。ま、いいや」


じゃあおれから! と宣誓し、彼が画用紙を掲げる。


「マスクライダーのレッド! めっちゃかっこいいだろ!?」


マスクライダーとは、日曜日の朝九時から放送されている特撮テレビドラマだ。僕が幼稚園くらいの頃からシリーズとして続いていて、ライダーごっこは大抵の男子が通る道である。

画用紙の中では、真っ赤な――といっても僕にはくすんだ朱色にしか見えない――マスクを装着したヒーローが仁王立ちをしている。


「うおーっ、レッドじゃん! すげー! かっけー!」

「先週のさ、レッドが新しい攻撃出したとこ、超かっこよかったよな!」

「ファイヤー・トルネード・アターック!」