ところが当時15歳の私が『ひとり暮らしをして帝区の高校に通いたい』と両親に相談したところ、治安が悪いからと、猛反対されてしまう。

それでも毎日毎日食い下がっていたら、ついに父親から受験票を破り捨てられる事態に。


結局地元の公立高校に通うことになった私は、生きるシカバネと化し。

見かねた両親から、全寮制であれば街は物騒でも少しは安心かもしれないというころで、ようやく転校の許可がおりて──。



今ここ!!夢じゃない!

生身の怜悧くんが私の前に立っている!




「風呂場貸してやる。体あっためてこい」


投げ渡されたタオルを見て、自分がビショビショだったことを思い出した。


「どうも、ありがとうございます」


もう、いい。
会えたからいい。

親切にしてくれるのが、QUEENの実験台だからだとしても。



「そういえばお前、名前は?」

「あ、……ええと……」



たとえ、



「……、……本田、です」

「へえ」



───思い出してくれなくても。