耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ。

必死な私をよそに、怜悧くんは相変わらず冷(さ)めた顔で言葉を続けた。



「これで教室戻る気か」

「へ……だって、ないのはどうしようもないので」


「そんな格好で歩いたら廊下で男に襲われるぞ」

「襲われる? なんで?」


直後。
チ、と短い舌打ちが聞こえた。



「相変わらず世話の焼ける女」


怜悧くんの視線をたどって、1秒、2秒――。


「……っ!!」


言葉の意味を理解した。

下・着・透・け・て・る!!



「わああああ!?」


やーん今度こそムリ!
黒土くんが言ってた「色気」ってこのこと!?

土に埋まりたい……っ。


あれっ。
でも今、相変わらずって言われたような……。


もしかして、私のこと覚えてくれてるの……?

淡い期待が生まれるけど、この前助けてくれたときのことを言った可能性もある。