「ふぇ……くしゅん!!」


風が吹いてくしゃみが裂炸すると、怜悧くんの視線は一時的にこちらに戻り。
期待したのもつかの間、またすぐに逸らされてしまう。



「あの、待……っ、ぬぁっくしゅ!!」


次々に肩に滴り落ちる水のせいで、とどまるところを知らないくしゃみ。
なんとも可愛げのない声を出してしまった恥ずかしさで、今度は自分から怜悧くんに背を向けた。


やーん最悪。
おしとやかなくしゃみの仕方、誰か教えてほしい。

今日はひとまず退散しようかな。
もし鼻水垂れてたらもっと笑えないし。


肩を落としながら階段へ戻ろうとしたときだった。



「おい転校生」
「っ!?」


低い声に振り向いたらびっくり。

真後ろに怜悧くんがいた。



「お前着替え持ってんの」

「え、 きがえ?」


あ、制服が濡れてるからか!


「あ、着替えはないけどへーきです……! 自然乾燥でいけると思うし」


って、返事をしたそばから、ぽたっと落ちてきた雫が肩に当たって。


「ふぇ……うっ、」

二の舞いは踏むまいと、出てこようとするものを必死に呑み込む。