「え?」


振り向いたら目の前に、黒土くんの満面の笑みと水がいっぱいのバケツがあって。


なに?

と思ったのもつかの間。



──バシャ……っ。


勢いよくなにかが飛んできて、とっさに目を閉じた。



「昨日の仕返し。ざまあみろ」


そんな声を聞きながらうっすら目を開く。

ぽた、ぽた、と髪先から雫が伝って落ちていくのをぼんやり見つめる。



え……なに、冷たい……。



「怜悧くん、風呂貸してやんなよ」



にやりと企んだような笑みがそこにあった。



その視線をたどった先は……私の胸元。



「おれのおかげで、ちょっとは色気出たぜ」



黒土くんが去ったあとで、初めて自分が水をかぶったことに気づいた――。