「君たち」
声をかけられて、怒鳴られるんだと覚悟する。
だけど、何事もないまま2秒、3秒と経過して。
結局、理事長が私たちに向けて言葉を発することはなく。
代わりに
「京町くん」
と後ろに立つ生徒に声がかかる。
──ドクリ。 頭より先に体が反応した。
きょうまち、くん?文字にして、頭の中でゆっくりなぞる。
ばくんばくんと急激に速まる鼓動。いきなりのことで、体の器官がいろいろと追いつかない感じ。
は……吐きそう。
「私は寮のほうを見に行ってくるよ。ボヤらしいが……、どうしたものか」
ぶつぶつと言いながら理事長が立ち去る気配がする。
でも、私の頭の中は怜悧くんでいっぱいで、他のことはちっとも入ってこない。
聞き間違えでなければ、そこにいるのは怜悧くん、だ。
顔を見たら、すぐにわかる自信がある。
とりあえず……視線を上げないと。それから、なにか言わないとっ。
なんて言おう!
葛藤の中、一番に口を開いたのは黒土くんだった。



