黒土くんがいなかったら泣いてたと思う。
ただ、黒土くんの言う“あの人”のことが気になってしょうがないだけ。
――絶対にQUEENを選ばないという、赤帝のKINGのことが。
転校して以来、次から次へと
情報過多でパンクしそう。
現実味がない。ふんわり、ぼんやり。なんだかずっと、長い夢を見ているみたい。
始業のチャイムを聞きながら──早く怜悧くんに会いたいと思った。
教室では、黒土くんは私に一言もはなしかけてこなかった。
授業中はノートも教科書も広げずに頬杖をついて、それでもスマホを触るようなことは決してなく。
ただ黒板をじっと見つめていた。
先生の話を真剣に聞いているようにも見えるし
なにか別のことを考え込んでいるようにも見えた。
黒土くんが次に口を開いたのは、終礼が終わって、みんながわいわい喋り始めたときだった。
前を向いたまま、騒喧にまぎれるように話しかけてくる。
「三好に会ったってことは、やっぱそーいうことだよね。るなこ」
――それはなんの絡脈もなく放たれた。



