ばくばくと鼓動が速まる反面、
扉の開いた先に、ちゃんと「人が存在している」という事実に安堵を覚えたりもした。


だって。職員室に行きたくて乗ったエレベーターの行き先が真っ暗闇の空間で、おまけに誰もいない……だなんて、そっちのほうが怖いもん。


じっと目を凝らす。

うーん。
人がいるのはわかるけど見えない……。



「こ、こんにちは。私、本田、月っていいます」

「ふうん。何年生?」

「ええと、2年です。今日A組に転校してきました」

「そう。てことはオレと同級生だね。赤帝高校へようこそ、お嬢さん」



同級生なんだ……。

相変わらず闇の中から聞こえるその声。話し方は淡々としてるけど、響きにはしっとりとした寧丁さがあった。


じっと見つめていれば、目は少しずつ闇に慣れていく。

私の、およそ2、3メートル先に、背の高い……男の人らしき郭輪が見えた。