だいじょうぶ、私もそのくらいわかってる。
何年も前の約束に夢を見てるわけじゃないよ。

少し迷うように視線を泳がせたあと、黒土くんはわざとらしいため息をついた。



「まあいいんじゃない。ふらふらしてる軽尻より、一途なほうが魅力的だろうし」

「っ、ほんと……?」


てっきり笑い飛ばされると思ったのに。案外、優しかったりするのかな……。



「で、誰? その約束した相手って。うちの高校にいるんだろ?」

「う……。たぶん赤帝だとは思うけど。まだ、いるかどうかわからなくて……」



名前を口にするのが怖い。

もし、そんな名前の生徒はいないって言われたら……
しばらく立ち直れないかも。


それでも、と思う。



「あの、ね。この学校に……」


記憶をたどって、頭の中に並べた文字をそっとなぞった。



「“京町怜悧”って人いる……?」


──ばくんばくん。


内側から心臓が飛び出てきちゃいそう。


吐きそうになりながら黒土くんを見つめるけど、これといったリアクションがない。


どっち、なの……。