「るなこ」

もう一度名前を呼ばれて、はっと瞬きをした。



「わた、し……。彼氏はいないけど……」

「うん」

「好きな人が、いて……。というのも、その人に会うために赤帝に転校してきたところがありまして……」



ああ、なんてこと。
誰にも言わないって決めてたのにな。



「だからね、あの。冗談でも、他の男の子とイチャイチャ、みたいなの、するのは嫌なの……」

「はあ? 好きな人追いかけてきて転校してきたとか、死ぬほど重っ」


「うう、それは承知です……。でも小学校5年生のときに、その人と同じ高校に行こうねって約束したから……」

「小5? それはまたえらく昔の約束を……。そんなの、相手はとっくに……──」



黒土くんが言葉を切ったのは、たぶん私が傷ついた顔をしちゃったからだと思う。


相手はとっくに忘れてる。
たぶんそう言いたかったんだよね。