「わ、黒土サン……っ。ちょ、お前ら道空けろや!」
男子生徒が慌てたように隅に寄って頭を下げる。
なんとも異様なこの光景を目にするのも、これで3度目。
たった20メートルくらい歩いただけなのに。
何者?
目の前を歩いてる人のことをなんにも知らない私。当の本人は、ふわあと眠たそうにあくびをしている。
「あーあ、くだんな~。道空けろとか誰も頼んでないのにねえ?」
ひとりごとみたいだったから、なにも返さないでおいた。
広い校舎を歩くこと2分ほど。
黒土くんが足を止めたのは、なんと保健室の前だった。
あーわかった!
替えの制服をここで借りようってことだ!
「先生いるといいね」
「はあ? いたら困るけど」
「えっなんで? だって制服を借りるんだよね?」
「……、」
「……。あっ」