「じゃ……じゃあ、なおさらだめだよ。たとえ、京町くんが私を指名したとしても、ぜったい降りるから……っ」

今度こそ気持ちを振り切ろうと思った。


「っ、おい、る――」


腕を掴まれてわけがわからなくなる。引き寄せる手を思わず振り払った。


これ以上はそばにいたくない。

すごく泣きたいのに、大事ななにかが乾き切ってしまったみたいに、涙が出なかった。


おやすみなさいとだけ伝えて、ベッドから立ち上がる。


早くひとりになって、眠って。なにもかも忘れたい……っ。



ふたりの部屋を繋げる扉に手を伸ばす。






「そんなこと言うなよ……ずっと、好きだったのに、」


扉が閉まる直前

なにか言われた気がしたけど、聞き取れなかった。