「なんでもないです……」

怜悧くんを好きで、高校まで追いかけてきたことがバレるわけにはいかないの。

特になんとも思ってない女が、写真まで持って同じ学校にやってくるなんてホラーだよね、自分でやっておいてなんだけど!



奇跡的に、怜悧くんのいる前で幹部の人たちから「月」って呼ばれたことはまだないけど、それも時間の問題……。

黒土くんが黙っててくれる限りは、大丈夫だと思いたいのに、心の休まる暇がない。



ずっと片想いしてた怜悧くんと一緒にいられるのが嬉しいのに、それは自分がかつての幼なじみだとバレてないからこそ、叶ってるワケで。

思い出してもらいたいけど、思い出されたらきっと嫌われる。

……すごく切ない。


「いったいなに考えてたら、そんな顔になんだよ」

「そっ、そんな顔とは」

「この世の終わりデスみたいな」


もはや言い訳すらできない。


「そんなに酷い顔してるの、私……」

「鏡見るか?」

「いや、いい、いいです……」