「さて。始める前にひとつ。盛り上げるために、みなさんの意志をお伺いしましょうか」
部屋の間接ライトが、並んだカードたちを、ゆらゆら幻想的に照らしている。
「あんたの指名は、ほんとうにおれでいいの?」
「っあ、はい。黒土くんでお願いします」
「わかった。頑張ってね。ちなみに、おれはあんたにするから」
え、私……?
問い返す暇はなく、黒土くんの視線は次の人に向く。
「じゃあ、三好は?」
「京町。ポケモンのレアカード交換してほしい」
ポケモン!
ふたりとも、そんな顔して、まだ集めてるの(いい意味で)!
「夕市は?」
「怜悧クン。ずっと聞きたかったことがあるんだよねー!」
ああ、怜悧くん人気だ。
私も……とはちょっと思ったりするけど、怜悧くんに命令するなんて普通におそれ多くてムリかも。
「じゃあ最後。怜悧くんは?」
「本田サンで」
へ?とまぬけな声が出た。
あっさり、当然のように、本田サンでと言われた、ような。
「ハイ、開始でーす。同じカードあったらさっさと捨ててくださいねー」
私だけを置いてけぼりにして、ゲームは始まった。



