いったん忘れよう、夜のことは夜に考えようと思うのに、黒土くんは会話を続ける。
「ずっと聞こうと思ってたんだけどさあ。るなこ、昨日怜悧くんとどこまでいった?」
「へ……っ、いやっなにもないよ! と、ところで──そんなことより、」
話題転換! 話題転換!必死で頭を働かす。
「黒土くんってどんな女の子がタイプなの?」
「……、はあ?」
お団子ツインテールの子に、聞いてほしいって頼まれたからね!
いきなりなに、と、途端に怪訝な顔を向けられるけど、怯まない。
「気になるから、すごく!」
「おれたちは秘密主義だって昨日言ったじゃーん。自分のことべらべら喋るとか、愚(おろ)か者のやることって決まってんの」
「ええ……教えてくれないの?」
落胆の声を上げると、黒土くんは少し考えるように間を置いて。
「それ、本当に本気で知りたい?」
「知りたいですっ」
「じゃあ、昼休みに4階においで」
「え……4階って」
あの、廊下が真っ暗な異様空間に?