「まあいーや、早く行こ。3限目に間に合いたいんでしょ」
「はい、どうもすみませぬ……」
立ち上がった黒土くんに続いて怜悧くんの部屋を出た。
檻と校舎を繋ぐ連絡通路と暗幕で仕切られた4階の廊下。
やっぱり異様だなあと改めて思いながら、3度目のエレベーターに乗り込んだ。
「るなこは友達が欲しーの?」
「え? まあ……、気軽に話せる女の子がいたらいいなあとは思うけど。もう無理だよね……嫌がらせまで受けてるくらいだし」
そう。
転校してから、まだ一度も女の子と日常的な会話を交わしたことがないという悲しき現実。
「いや、概一にそうとも言えない状況になってる。稽滑な女どもは、今日はまた違った出方をするかもねえ」
「?……どういう意味」
エレベーターが止まると同時、黒土くんは笑顔を見せた。
「ねえ、るなこ。試しに廊下をひとりで歩いてみなよ。おれは、あとから追いかける」
──それはそれは、不敵な笑顔だった。



