ひとりにされるんだ、と寂しい気持ちが生まれたところで、引き止める権利は当然なく。
「……わかった、いってらっしゃい」
物分りのいい女になるんだ!と言い聞かせて見送る。
──見送った、はずだった。
出て行こうとした怜悧くんが、ふとなにか思い出したように足を止め、私のところに戻ってくるから、びっくりする。
「疲れたなら俺のベッドで寝てればいい。続きはまた今度な」
そんなセリフのすぐ後。
怜悧くんの影がかかって、目の前が暗くなる。
「……、」
──ちゅ……とやけに丁寧に落とされた唇。
「…………へ」
状況を理解したときには
もうそこに怜悧くんの姿はなかった。