「……っ、は、うぅ」
息が苦しくて、溺おぼれちゃう気がして、今度はすがるように、さっきより強く抱きしめたら、一瞬、怜悧くんの動きが止まった。
「お前どういうつもり」
「……?」
ぼうっとする頭で、見上げた、矢先。
――ヴーッ、ヴーッ。
「!」
一度は鳴り止んだスマホがまた音を立てる。
我に返った。
なに抱き着いて……!
とっさに体を離すと、怜悧くんは、はあっとため息をついた。
「なに」
電話に出ると不機嫌な声。
相手、誰だろ……。
目を逸らして、ぜんぜん気にしてませんよ風を装う。
聞き耳だけはしっかり立てて。
相手のセリフまでは聞き取れないけど、声の調子で男の人だってわかった。
「今から? ……来てもいいけど開けてやんねーよ。…… はあ、なんでって」
ソファがわずかに揺れる。
視線を向けられたのを感じた。
「お前だって邪魔されたらいやだろ」