瞬間。
──ヴーッ、ヴーッ……。
とつぜん鳴り響いたバイブ音が、現実に引き戻す。
反応しているのは怜悧くんのスマホ。
だけど、一瞬画面を見ただけで、出ようとしない怜悧くんは、スマホをそのままソファに投げやった。
「え……? 出なくていいの?」
「いーよ、まだ離れたくねー」
「っ、?」
な、なにそれどういう意味――。
動揺する隙もなかった。
見つめられたらもう、黒い瞳の中にすうっと吸い込まれて。
「……ん、」
優しく押し当てられた唇――。
……え?
頭は真っ白。
でも、すぐに落ちてきた2度めの熱は、甘い感覚だけを伝えてくるから……。
「っ、……ぁ」
余計なことは考えられなくなる。
キス……甘い……。
背中に腕が回されたのがわかった。
もっと、くっつきたい……。
無意識に自分からも腕を回して、ぎゅっと抱き着く。
なにやってるんだろうって、頭のどこかで考えながらも、体はいうことをきかない。
好きな人を、本能のままに求めてしまう……。