わずかに笑う気配がして、反射的に顔を上げるけれど。
──気のせいだったみたい。
固く結ばれた唇をぼんやり見つめていれば、怜悧くんは背もたれから少しだけ体を起こした。
おもむろに伸びてきた左手が、私の肩に触れるか触れないかのラインで……ピタリと止まる。
う、ん?
硬直する体、激しく鳴り響く鼓動。
息をすることさえ躊躇われる静けさの中、怜悧くんがさらに距離を詰めたことでソファが沈む。
はっきり縁取られた二重の目、スッと通った筋鼻
なめらかそうな肌、薄い唇。
間近で見た17歳の怜悧くんは、どこを切り取っても、不自然なくらい綺麗だった。
「れ……、きょう、まちくん?」
今にも肩を抱かれそうで、だけど一向に抱かれない、このなんとももどかしい体勢。
うるさい心音を誤魔化すように名前を呼んでみると。
「なぐさめてやろうと思ったけど、やっぱやめた」
次の瞬間、ぱっと手を離されるから、思わず。
「っえ、なんで? ですか」
「だって、お前どうせ俺のこと突き飛ばすだろ」
「っ、突き飛ばさないよ……! さっきは動揺してて、ついうっかり! だから……──」
そこで、しまったと口をつぐむ。