――はっと我に返るまで10秒くらいかかった。
馬鹿みたいだけど、ずっと好きだったから……。
今は好きってことしか考えられなくて、聞かれたことに対して、まるでトンチンカンなことを言った。
どうしよ、なにかいい感じの言い訳……。
でも、焦る私をよそに、怜悧くんはお風呂場へと足を進める。
あれっ?聞こえてないわけはないんだけど。
冗談だと思われたのか。
はたまた、ドンがつくほど引かれたのか。
後者だったらつらすぎる。
「お前の荷物は管理人室で預かってるって」
淡々と事務的に会話を続ける怜悧くんに、私もただ機械みたいに頷く。
「取りに行くのは明日にしな」
「へ……なんでですか?」
「今日はもう戻らないほうがいい。幹部のJOKERと転校生が2人で抜け出したって、下で騒ぎになってる」
そう告げると、ぱっと手を離した怜悧くん。
それでも無言の圧でお風呂場まで押しやられ、とうとう逃げ場を失った。



