「ちょっと待ってね桜子。先にこいつの息の根止めるからさ」



一体今、自分がどんな顔をしているのかわからない。


奴を殴るたびに飛んでくる返り血も気にせず、醜い音を立てながら殴り続けた。



「やだっ…」



背中に、暖かい感触。

小刻みに震える腕を、必死に俺に巻きつけて、止めに入る桜子。

……抱きつかれてたら、殴れないから、ね?



「………桜子、危ないから離れてて」


桜はなんにも心配しなくていいから。

こいつの息の根も、後始末も、ぜーんぶ俺に任せて?



「わたし…大丈夫、だから…っ、だから…」



何が、大丈夫なんだ。


お前、自分が何されたかわかってんのか?

聞き分けの悪い桜を俺から離そうと、桜の方を見る。


桜は、頰を上気させ、息を乱し、必死に俺を見つめていた。

ごくり、と、唾を飲んだ。



「たす、けて…がっ君…っ」